転院先での診察

転院先の放射線科のお医者さんの診察があり、お話ししていると、どうやら、頭頸科専属で放射線を担当されているようで、こんなに大きい病院になると専門を分けないとやっていけないので、とのこと。
それがいいのか悪いのかわかりませんけどね、とおっしゃっていた。

実際の治療の話になり、放射線治療の副作用としては、広範囲に口内炎になったり、のどが腫れたような状態になって、食べるのもむつかしくなることがあるので、胃瘻を作ることを勧める、とのことだった。
ただ、自分的には、なんだかそれは情けないな、と思わずにはいられない。
口から食べられなくなるなんて。

また、もう一つの大きな副作用として、舌に放射線が当たるのは避けようがないため、味覚がなくなってしまう、とのことだった。
これに関しては、30才台や40才台の若い人は回復するが、70才台や80才台の方は、回復しないことが多い、とのことで、つまり自分は五分五分くらいのところにあるのかな、という感じがする。
ただし、80才台の方でも回復した方いらっしゃって、その方は、料理を作るのが好きでなんとか回復したい、という意思があったからではないか、とのことだった。
食べるのが好きな方は、無理をしてでも食べるので、結局それが味覚のリハビリにもつながるのではないか、とお医者さんはおっしゃっていた。
逆に、胃瘻に頼って一定期間食べずにいると、今度は口から食べるのが困難になってしまうとのことで、やっぱり食べないといけないんだろうな、と思った。
扁桃腺の手術を受けて退院した直後も、食べ物の味が喉にしみて、あまりに痛いので、思わず箸を置くことがあったけど、あんな状態✕10倍くらいだったりするんだろうか?
結局、副作用の出方は人によって違うんだろうし、お医者さんも、どちらかというと悪い場合の話をされることが多いので、それによって逆に怖じ気づいてしまうような気もする。
だからと言って、お医者さん的には、最悪の状態についても説明しておかなければならないなんだろうし。

現状、自分の腫瘍はPET/CTで検出できる程度の大きさのものは、結果的に摘出してしまった状態なので、このまま何の治療もしない、という選択肢もあるのかもしれない。
もし、そういう選択をしたらどうなのか、とお医者さんに尋ねてみると、1年か1年半後には再発する可能性が高い、とのこと。
手術で腫瘍は摘出したが、それ以外のところには当然固まりになっていないがん細胞が散らばっていると考えるべきで、今だからこそ、できるだけそれらを叩いて、完治しておく必要がある、と力説されていた。
結局、やるべきことは、放射線治療+化学治療なんだろうな、とは思っているんだけれども、それを疑いなく納得できる材料が欲しくて、お医者さんにいろいろ問いただしているような状況だと思う。

もし、放射線治療をするとしたら、どのような日程になるのか?と尋ねたのに対して、お医者さんは、放射線治療については、仮ではあるものの、こんな感じでということで外来の予約を入れてくれた。
放射線の治療開始までには、準備からどんなに早くても2週間はかかるとのこと。

お医者さんの作ってくれた日程は、放射線治療の準備にかかるのが7月1日になっていて、6月に時間が空いた状態になっている。
前回のこともあるので、妻を病院に連れてきて説明してもらう時間を取るにはちょうど良さそうにも思えたが、このタイムラグを作らずに速やかに放射線治療を開始するほうがリスクは小さくなるのではないか?という疑問もあった。

これに対して、お医者さんは、すでに扁桃腺から喉のリンパ組織に転移していたので、この際、上部内視鏡検査をして、食道や胃、十二指腸に転移していないかを確認して、治療が必要なところを確定した状態で治療したほうが良いと思う、とのことだった。

腫瘍マーカー

病院で、喉の状況の経過を見てもらった。
先週採血した結果も、やはりSCCという扁平上皮がんに対して使われるらしい腫瘍マーカーは正常値にとどまっているとのことだった。
いくつかのウェブサイトを参照してみたけれども、腫瘍マーカーも、すべての種類のがんに対して、特異的に適用できるものがあるわけではないようで、SCCはどうやら扁平上皮がんのうちでも、肺がんや子宮頸がんなどに適用されることが多いようだった。
一応、喉の腫瘤も取って、扁桃腺も摘出した後の、PET/CTによれば、それ以外に大きい集積はなかったので、これから放射線治療をするとして、何を指標としてやるんだろうか。
腫瘍マーカーの値が高ければ、それが低下するなどで、治療の成果が上がっていると判断するんだろうけど。
まあ、そのへんは、診察を受けてみないとわからないので、とりあえず、木曜日に転院先の放射線科のお医者さんの診察を受けるのを楽しみに。

セカンドオピニオンをどこで受けるのか

首の腫瘤摘出手術を受けた病院は、がんの専門医とされているお医者さんは在籍されていないようで、今後、どこでどんな治療を受けるにしろ、一度、セカンドオピニオンという形で確認して欲しい、と妻から強く言われた。
自分は、あんまり考えずに、このまま扁桃腺の摘出手術も受けてしまって、後は大学病院くらいで放射線治療を受ければいいかな、と漠然と考えていたが、少しでも納得感のある治療を受けるために、実績が多い病院で話を聞いて欲しい、というのが彼女の言い分だった。
原発巣はPET/CTで明らかになっているので、さっさと扁桃腺を取ってしまいたい、という気持ちがあり、軽い言い争いになってしまったが、娘に、一番お父さんのことを心配しているのがお母さんなんだから、けんかしてはだめでしょ、と説教されてしまったので、仮で予約していた手術の日程はキャンセルして、セカンドオピニオンを受けられるところを探すことにした。

情報サイトなどを参考に、中咽頭がん(ほぼ扁桃腺が原発巣であることが確実だったので)に関する事例数が多いところを選んだ。
並行して、名医を紹介するというサービスにも電話してみた。これは、入院給付金について相談した際に、生命保険会社の方から紹介されたもので、よければ参考に、とのことだった。
受付の方の対応は丁寧ですぐに受付の方にこちらの状況も理解してもらえたが、サービス自体が、お医者さん側で受け入れてくれることを確認してから紹介する、というものだったので、ゴールデンウィークをはさんでいる関係もあって、紹介してもらえるまでに1ヶ月以上はかかるだろう、とのことだったので結局利用しなかった。
インターネット上で検索すれば、ほとんどの情報を入手することができる。入手した情報を取捨選択して並べ替えるという手間はかかるが、そのほうが、自分が納得できる情報を入手できる可能性が高いのではないかと思う。

事例数に関する情報サイトを参考にして選んだ2つの病院に電話してみたが、最初の病院は、セカンドオピニオンの受診には、ゴールデンウィークをはさんでいることもあって、4週間はかかります、との返事だった。
受付の方に悪意は全くないと思うが、自分にはその返事がかなり素っ気なく響いて、期間がかかるというのもあるが、なんとなくここでセカンドオピニオンを受けることは歓迎されていないんだな、というふうな印象を受けてしまった。

もう一つの病院は、まずはセカンドオピニオンのために患者様が用意されている資料を送っていただき、内容を確認して、ふさわしいと思われる医師の予約を取るようにいたします、とのことだったので、遠隔地なので宅急便で送ることにした。

セカンドオピニオンはなんとなく2つお願いしようと決めていたので、もうひとつ、違う方角の病院を選んでセカンドオピニオンの申し込みに行った。
ここも、今回は資料を預かって、検討会にかけた上で、セカンドオピニオンを受診してもらえる日を改めて連絡する、ということだった。
受付の方に、実際に自分を受け入れてもらえるのかも知りたいのだが、と尋ねると、セカンドオピニオンの中で、受診が可能か、どういう治療になりそうか、を先生に尋ねて判断して欲しい、とのことだった。
この病院はセカンドオピニオンの受付が郵送ではなく、窓口への持参が必要だったので、病院まで出かけていったが、その際に、できるだけ早く、と無理を承知でお願いしてすると、たまたま持参した翌日が検討会なので、翌々日には予約できると思います、とのことだった。
その言葉の通り、翌日には連絡があり、明日の10時に来てください、とのことだった。

PET/CTの結果

果たして、PET/CTの結果は届いているんだろうか、と危ぶみながら診察に行くと、外来から受付まで郵便物の到着を問い合わせてくれて、届いていることが判明。
事務の人に持ってきてもらうので、しばらく待ってね、ということで、診察室から待合室へ逆戻り。
このへんのまったり感が、片田舎の病院の良いところか?

しばらくたってから、改めて診察室に呼び込まれて、PET/CTの結果を見ながらお医者さん曰く、予想通り、左の扁桃腺の集積が27ですからここが一番怪しいですね、とのこと。
後で調べてみると、この集積の値というのは相対値とのことで、10以上だとがんの疑いがある、とされているらしい。27ならば、かなりダントツの値のようだ。
首にも集積があったが、これは、手術の傷跡によるものと考えられるようで、扁桃腺以外に(肺や胃も含めて)疑わしい集積がなかったのは、良い話題だった。
お医者さんによれば、十中八九、左の扁桃腺が原発巣でしょう、とのこと。
さらに、表面からはがん組織が確認できないので、扁桃腺を取って、組織検査をして、原発巣が確定して初めて、治療のスタートになる、とのこと。
そして、もし、扁桃腺の組織を検査して、がん細胞が確認できなければ、原発不明がんということになって、それはそれで治療が大変になる、と、さらっと不吉なことも忘れずに付け加えてくれたりする。

お医者さんが、原発巣を確定しようとするのは、以前にも触れたとおり、がんというものが、発生した部位の性質を残したまま増殖していくからで、原発巣がどこか、によって、どういう治療をするのか、効果の高い治療法なども異なってしまうから、ということのようだ。

このまま5月7日に入院して、8日に手術を受けるのが最短、といわれたので、とりあえず、それで予約した。
ただ、同時に、2カ所の病院をセカンドオピニオン先として紹介もしてもらって、もしかしたら、手術をキャンセルすることもあるかもしれません、とは言い訳しておいた。

お医者さんは、どこでも紹介してあげるから、と、2つあげた候補宛の情報紹介状を、さっさと書き上げてくれた。

PET/CTの検査

予約されていたPET/CTの検査を受けるために、大学病院へ。
PET/CTの概略を自分流に言うと、ブドウ糖を活発に消費している(要するに、活動が盛んな)細胞の固まりが、身体の中のいろいろな臓器と照らし合わせて、どのへんに存在するのか、というのを映し出す装置、ということだ。
がん細胞は、正常組織と比べてはるかに活発にブドウ糖を消費するので、がん細胞の固まりであるがん組織が、身体のどこにあるのかが明らかになる、ということらしい。

のどの手術をしてくれたお医者さんによると「しゃべっていると、声帯のあたりが活動してPET/CTに映ってしまうこともあるから、本当に安静にしてないとだめだよ。」と脅されたので、いったいどうな感じなんだろう、と、自分的には興味津々、大学病院へ行った。
体重を確かめて、指先から一滴血を採って血糖値の検査をする。
担当の看護師の方が、結果は、明日中にはかかっている病院に送ります、とおっしゃっていたが、それでは明後日の午前中の診察に間に合いそうな気がしないので、明後日の午前中に診察の予約が入っているので、できるだけ早くお願いします、とダメ元で言ってみた。すると、じゃ、なんとか今日中に読影してもらって、明日の午前中には送りますね、とのこと。我ながら厚かましいとは思うが、それほどたくさんの患者さんで混み合っている、という訳でもなさそうなのでいいことにしよう。このへんのまったり具合が、片田舎の大学病院の良さなのに違いない。
腕からPET/CTで検査をするための薬剤(フルオロデオキシグルコースというブドウ糖=グルコースにフッ素18という弱い放射性元素を組み込んだもの)を注入。薬剤は点滴の袋みたいなのではなく、頑丈そうな箱の中から出てくるが、この箱はきっと遮蔽用の鉛あたりでできているんだろうか?
薬剤を注入された後、控え室のベッドで安静にするよう言われたので、おしゃべりをしないようにおとなしく横になっていた。眠っていたわけではないけれども、夢うつつのような状態で待っていると、呼び出しがあったのでトイレで小用をすませてからPET/CTが安置されている部屋へ歩いて行った。トイレに行くのは、薬剤は尿として排出されるので、尿管や膀胱が映るのを少しでも軽減するためらしい。
PET/CTの機械に横になると、頭は枠の中にはめられて固定、腕も身体全体に布のようなものを巻かれて軽く固定され、
「できるだけ動かないようにしていてください。」
と言われて放置される。
スキャン用のセンサーが、くるくる回りながら移動するのが見えたが、できるだけじっとしているために、目を閉じて、台が動く音やセンサーが回転していると思われる音を聞きながら、また夢うつつ状態に。
特になんということもなく検査が終わり、しばらく休んだ後で、ちょっと驚くような値段の検査料を払ってから帰る。
当然、がんの原発巣診断なので、健康保険の対象になるが、それでもかなり高い。

けれども、首の腫瘤摘出手術を受けていたので、高額療養費制度の対象になり、手術にかかった費用と合算されて後で返ってくることになった。
この、高額療養費制度だが、ちょっとクセのある制度なので、対象になる期間や、合算される対象について理解しておかないと、返ってくると思っていたものが返ってこなかったりすることもあるので注意が必要。

  • まず、合算の対象になる期間は、暦の1カ月。
  • 合算されるのは、同一の病院や診療所における入院にかかった費用、または、同一の病院や診療所における外来にかかった費用、で、同じところにかかっていても入院と外来は別の扱い。
  • さらに、複数の窓口で払った分も合算されるが、70才未満の人の受診は、2万1千円以上の自己負担となったもののみ合算される。(医療費控除は自分で計算するのですべてを合算できるけれども、高額療養費制度は、健康保険組合が、医療機関からのレセプトをもとに算出するから、自己負担の大きいもののみの合算で勘弁してね、というところなのかもしれない。)
    • ※ただし、これは、あくまで2015年4月22日時点の情報なので、厚生労働省のサイトや、所属している健康保険組合のサイトで、最新の情報を確認してください。

告知

今日退院、という日の診察で、その日の担当のお医者さんに、
「病理検査の結果が出たんですが、あんまり良くなかったんですよ。」
と、摘出した腫瘤が、悪性腫瘍だったことを告げられた。
「扁平上皮がんだったいう結果が出ています。」
悪性ということもあり得るな、とは思っていたので、目の前が真っ白、みたいなショックは受けなかったが、もうちょっと劇的なというか、芝居がかったというか、そういう類の言い方をしてくれてもいいのに、と思わないでもなかったけど、お医者さんからすれば、one of them なわけだし、けっこうあっさりしたものなのかもしれない。それを聞いて、うーん、自分は、くじ運がないからなー、というようなことをぼんやり考えていた。

同じ日に、手術を担当してくれた別のお医者さんも診察してくれて、そのお医者さんも、同情的な色も見せずに、扁平上皮がんであるという事実に触れて、さらに、組織検査の結果の扁平上皮がんであるとの病理報告書を印刷して手渡してくれた。
「首にがんができるというのはほぼあり得ないので、原発巣というがんのもとになっているところからがん細胞が流れてきて、ここに腫瘍ができたと思われます。ですから、まず、その原発巣がどこなのかというのを探すことになります。よくあるのは同じ側の扁桃腺ですが。」
その後、スコープで丹念に鼻の穴から喉の奥にかけてを見た後で、その動画を再生しながら、
「どの部分にもがんのような兆候はないんですね。強いて言えば、上咽頭にすこし色が変わっているところはあるけれども。それよりは扁桃腺が右と左で大きさが違うので、やはりそれが怪しいでしょう。普通、扁桃腺は両方同じ大きさで、腫れても同じくらいの大きさになるので。」
「これから、PET/CTという機械で怪しそうなところを探して、そこを組織検査して、原発巣を確定することになります。ここにはその設備がないので、一番早く予約が取れるところで診てもらいましょう。」

とりあえず、退院するためにベッドのところで荷物を整理していると、その日、最初に診察してくれたお医者さんが、
「大学病院でPET/CTの予約が取れたので、当日はこれを持って行ってください。」
と予約書類を持ってきてくれた。

自分ががん、と診断されても、首の傷跡は別として、それ以外の体調は手術前と同様に何の問題もないので、本当に実感がない。組織検査の結果(扁平上皮がんと診断されている結果)を受け入れられない、ということではなく、がんならそれなりのことをしなくては、という気持ちはあるけれども、とにかく実感がない状態だった。

まずは情報を調べなくては、とネット検索で、そもそも「扁平上皮」ってなに?「扁平上皮がん」はどういうもの?と調べると、本当にたくさんの情報があって、これまでまったく意識してこなかったけれども、がんにかかる人って本当にたくさにいるんだな、というのを実感する。

その中で、国立がんセンターが運営しているサイト「がん情報サービス」に、
がんになったのは、決してあなたのせいではありません。
という一文を見つけて、それを読んだときに、訳もなくな涙が流れてしまった。

がんは、転移した場合でも、原発巣の細胞の性質をそのまま持つものなので、まず、原発巣を明らかにして、その部位に応じた治療をするものらしい。

妻にはどう伝えたものか悩んだが、退院した日の晩御飯の支度をしている時に、できるだけあっさりと、組織検査の結果は良くなくて、扁平上皮がんだと言われた、と告げた。
彼女には、この手術が、組織検査が一番大きな目的であることは伝えてあり、もちろん、がんと診断される可能性があることも伝えてあった。
その時に、彼女は、もし検査の結果が良くなかったとしても、きっと大丈夫よ、と根拠のない楽観さを示していたが、今回も反応はまったく同じ。
彼女曰く、結果が良くなかったのは残念だけど、きっと大丈夫よ、私の友達も乳がんで余命宣告されたけれども、もう5年以上生きてるもの、あなただって、大丈夫よ、と。

同じ日に、晩御飯の後で、子供にも伝えたが、やはりショックを受けていたようだった。

今日の食事(昼前に退院したので、朝食のみ)