医療費

数ヶ月に1回、健康保険組合から届く、ここしばらくの医療費に、放射線治療を受けた入院の分が記載されていた。
自分の支払った金額は、高額療養費制度のおかげで、本当に少ない額だったけれども、かかった医療費は、もちろんそれの三倍などというお安い額ではなかった。
42日間の入院での医療費を合計すると、約300万円で、思わず、へー、と声を上げてしまった。
もちろん、診療明細はもらっていたので、入院期間の点数がどのくらいになるのかはわかっていたけれども、改めて金額として示されると、そんなに高額な医療を受けたことになるんだ、と再認識した。
そして、いろいろ問題があるにせよ、日本の医療制度は、下々の者が病気になったときに、ちゃんと役に立つようになっているんだな、と感心してしまった。
よく、がん保険などのコマーシャルで、がんになると高額な医療費かかかるから保険で備えを、というのがあるけれども、(自分が標準治療しかうけなかったというのがあるかもしれないが)経験した限りではそんなに高額なお金を払う必要はなかった。

医療保険の手術給付金

先日、外来で胃瘻抜去を行った際の診療費の領収書を見ると、手術料の欄に金額が入っていて、本人的には、あれで手術なのか、という軽い驚きがあったんだけど、同時に思ったのが、これって、もしかして、手術給付金の対象になるんだろうか、というお金に関すること。
自分の場合は、生命保険の医療特約として、入院時と手術を受けたときに給付金が支払われる契約をしている。

手術の給付金については、今回の一連の手術をうけるまで、契約の存在すら意識したことがなかったけれども、どうやら病院でもらう請求書の手術欄に金額が入っているだけで給付金がもらえるということがわかって、保険も役に立つことがあるんだな、と思った次第。
自分が入院したり、手術を受けたりすることになるなんて、本当に予想もしていなかったので、医療特約の部分については、まったくの掛け捨てのつもりだったのに。

でも、確かに涙が出るくらい痛かったとしても、あんな瞬間芸みたいなのが本当に手術に該当するんだろうか、とかなり疑問だったので、最近、すっかりおなじみになってしまった生命保険会社の担当の方に電話をかけて、外来で胃瘻抜去術というのを受けたが、これが給付金の対象になるのか調べてもらうことにした。
すると、翌日には回答があって、給付金の対象に該当するので、請求のための書類を送る、と連絡があり、今日、その書類が手元に届いた。
さっそく、請求書に記入して生命保険会社に送ったが、このへんは、病院でもらう診療費の請求書の内訳に目を通していなければ、自分も請求しなかった可能性が高い。

医療保険に入るかどうか、というのは、別の意味で議論の余地のあるところなので、一概におすすめするつもりはないが、すでに医療保険に入っているのだとしたら、もらえるものはありがたく頂戴することにしたい。
そのためにも、病院でもらう診療費の請求書はきちんと目を通すべきだと思う。

また、がんの治療などを受けると、年間で考えるとそれなりの額になることが予想されるので、確定申告で医療費控除を受けるためにも、きちんと領収書を保存しておく必要がある。

今回自分が経験して、へー、と思ったのは、

  • 一度に行った手術だけれども、悪性腫瘍だった左の扁桃腺を除去する手術と、そうでなかった右の扁桃腺を除去する手術は、別々の手術として扱われる、
  • 瞬間芸だったにも関わらず、胃瘻抜去術は手術給付の対象になる、

の二つ。

すでに医療保険に入っているのなら、もれなく請求できるように、診療費の請求書にはきちんと目を通して、もしかして、と思う内容があれば、おっくうがらずに保険会社に問い合わせてみるべきだろう。

セカンドオピニオンをどこで受けるのか

首の腫瘤摘出手術を受けた病院は、がんの専門医とされているお医者さんは在籍されていないようで、今後、どこでどんな治療を受けるにしろ、一度、セカンドオピニオンという形で確認して欲しい、と妻から強く言われた。
自分は、あんまり考えずに、このまま扁桃腺の摘出手術も受けてしまって、後は大学病院くらいで放射線治療を受ければいいかな、と漠然と考えていたが、少しでも納得感のある治療を受けるために、実績が多い病院で話を聞いて欲しい、というのが彼女の言い分だった。
原発巣はPET/CTで明らかになっているので、さっさと扁桃腺を取ってしまいたい、という気持ちがあり、軽い言い争いになってしまったが、娘に、一番お父さんのことを心配しているのがお母さんなんだから、けんかしてはだめでしょ、と説教されてしまったので、仮で予約していた手術の日程はキャンセルして、セカンドオピニオンを受けられるところを探すことにした。

情報サイトなどを参考に、中咽頭がん(ほぼ扁桃腺が原発巣であることが確実だったので)に関する事例数が多いところを選んだ。
並行して、名医を紹介するというサービスにも電話してみた。これは、入院給付金について相談した際に、生命保険会社の方から紹介されたもので、よければ参考に、とのことだった。
受付の方の対応は丁寧ですぐに受付の方にこちらの状況も理解してもらえたが、サービス自体が、お医者さん側で受け入れてくれることを確認してから紹介する、というものだったので、ゴールデンウィークをはさんでいる関係もあって、紹介してもらえるまでに1ヶ月以上はかかるだろう、とのことだったので結局利用しなかった。
インターネット上で検索すれば、ほとんどの情報を入手することができる。入手した情報を取捨選択して並べ替えるという手間はかかるが、そのほうが、自分が納得できる情報を入手できる可能性が高いのではないかと思う。

事例数に関する情報サイトを参考にして選んだ2つの病院に電話してみたが、最初の病院は、セカンドオピニオンの受診には、ゴールデンウィークをはさんでいることもあって、4週間はかかります、との返事だった。
受付の方に悪意は全くないと思うが、自分にはその返事がかなり素っ気なく響いて、期間がかかるというのもあるが、なんとなくここでセカンドオピニオンを受けることは歓迎されていないんだな、というふうな印象を受けてしまった。

もう一つの病院は、まずはセカンドオピニオンのために患者様が用意されている資料を送っていただき、内容を確認して、ふさわしいと思われる医師の予約を取るようにいたします、とのことだったので、遠隔地なので宅急便で送ることにした。

セカンドオピニオンはなんとなく2つお願いしようと決めていたので、もうひとつ、違う方角の病院を選んでセカンドオピニオンの申し込みに行った。
ここも、今回は資料を預かって、検討会にかけた上で、セカンドオピニオンを受診してもらえる日を改めて連絡する、ということだった。
受付の方に、実際に自分を受け入れてもらえるのかも知りたいのだが、と尋ねると、セカンドオピニオンの中で、受診が可能か、どういう治療になりそうか、を先生に尋ねて判断して欲しい、とのことだった。
この病院はセカンドオピニオンの受付が郵送ではなく、窓口への持参が必要だったので、病院まで出かけていったが、その際に、できるだけ早く、と無理を承知でお願いしてすると、たまたま持参した翌日が検討会なので、翌々日には予約できると思います、とのことだった。
その言葉の通り、翌日には連絡があり、明日の10時に来てください、とのことだった。

PET/CTの検査

予約されていたPET/CTの検査を受けるために、大学病院へ。
PET/CTの概略を自分流に言うと、ブドウ糖を活発に消費している(要するに、活動が盛んな)細胞の固まりが、身体の中のいろいろな臓器と照らし合わせて、どのへんに存在するのか、というのを映し出す装置、ということだ。
がん細胞は、正常組織と比べてはるかに活発にブドウ糖を消費するので、がん細胞の固まりであるがん組織が、身体のどこにあるのかが明らかになる、ということらしい。

のどの手術をしてくれたお医者さんによると「しゃべっていると、声帯のあたりが活動してPET/CTに映ってしまうこともあるから、本当に安静にしてないとだめだよ。」と脅されたので、いったいどうな感じなんだろう、と、自分的には興味津々、大学病院へ行った。
体重を確かめて、指先から一滴血を採って血糖値の検査をする。
担当の看護師の方が、結果は、明日中にはかかっている病院に送ります、とおっしゃっていたが、それでは明後日の午前中の診察に間に合いそうな気がしないので、明後日の午前中に診察の予約が入っているので、できるだけ早くお願いします、とダメ元で言ってみた。すると、じゃ、なんとか今日中に読影してもらって、明日の午前中には送りますね、とのこと。我ながら厚かましいとは思うが、それほどたくさんの患者さんで混み合っている、という訳でもなさそうなのでいいことにしよう。このへんのまったり具合が、片田舎の大学病院の良さなのに違いない。
腕からPET/CTで検査をするための薬剤(フルオロデオキシグルコースというブドウ糖=グルコースにフッ素18という弱い放射性元素を組み込んだもの)を注入。薬剤は点滴の袋みたいなのではなく、頑丈そうな箱の中から出てくるが、この箱はきっと遮蔽用の鉛あたりでできているんだろうか?
薬剤を注入された後、控え室のベッドで安静にするよう言われたので、おしゃべりをしないようにおとなしく横になっていた。眠っていたわけではないけれども、夢うつつのような状態で待っていると、呼び出しがあったのでトイレで小用をすませてからPET/CTが安置されている部屋へ歩いて行った。トイレに行くのは、薬剤は尿として排出されるので、尿管や膀胱が映るのを少しでも軽減するためらしい。
PET/CTの機械に横になると、頭は枠の中にはめられて固定、腕も身体全体に布のようなものを巻かれて軽く固定され、
「できるだけ動かないようにしていてください。」
と言われて放置される。
スキャン用のセンサーが、くるくる回りながら移動するのが見えたが、できるだけじっとしているために、目を閉じて、台が動く音やセンサーが回転していると思われる音を聞きながら、また夢うつつ状態に。
特になんということもなく検査が終わり、しばらく休んだ後で、ちょっと驚くような値段の検査料を払ってから帰る。
当然、がんの原発巣診断なので、健康保険の対象になるが、それでもかなり高い。

けれども、首の腫瘤摘出手術を受けていたので、高額療養費制度の対象になり、手術にかかった費用と合算されて後で返ってくることになった。
この、高額療養費制度だが、ちょっとクセのある制度なので、対象になる期間や、合算される対象について理解しておかないと、返ってくると思っていたものが返ってこなかったりすることもあるので注意が必要。

  • まず、合算の対象になる期間は、暦の1カ月。
  • 合算されるのは、同一の病院や診療所における入院にかかった費用、または、同一の病院や診療所における外来にかかった費用、で、同じところにかかっていても入院と外来は別の扱い。
  • さらに、複数の窓口で払った分も合算されるが、70才未満の人の受診は、2万1千円以上の自己負担となったもののみ合算される。(医療費控除は自分で計算するのですべてを合算できるけれども、高額療養費制度は、健康保険組合が、医療機関からのレセプトをもとに算出するから、自己負担の大きいもののみの合算で勘弁してね、というところなのかもしれない。)
    • ※ただし、これは、あくまで2015年4月22日時点の情報なので、厚生労働省のサイトや、所属している健康保険組合のサイトで、最新の情報を確認してください。